事故報告は保育現場だけのものではない
先週のオピニオンレポートは「保育施設における重大事故の内訳が示唆する保育施設選択時に考慮すべきこと 」と題して保育施設における事故の分析を行っています。
どの保育施設でも事故が起これば「事故報告書」を作成します。事故が起こらないまでももう少しで事故に繋がる様なことはインシデントレポートやヒヤリハットを作って施設内や社内の周知徹底と再発防止に繋げています。
保育施設でなくても例えば工場や建設現場、医療現場でも同じ様に事故報告を作りますし、インシデントレポートやヒヤリハットも作成します。

事故報告の目的
保育施設に限らず事故報告の目的は、事故の原因を分析し、再発防止の対策を進めることです。ヒヤリハットも含めてこうした地道な活動が重大事故を減らす結果となっていることは間違いないところです。
また、事故が発生してしまえば、保護者等への謝罪を含めた事故後の対応についても振り返りを行い、より迅速で適切な事故対応のための改善を行っていく必要があります。
これは建設現場や工場、医療機関でも同じことが言えるでしょう。
しかし、保育施設における事故報告は上記の再発防止や事故後の対応の改善といった目的以外に重要な目的があります。

建設現場の事故報告と保育施設の事故報告の違い
建設現場や工場における事故の原因分析と再発防止策は、事故を減らす効果はありますが、例えば設計の質の改善や製造・施工の質の向上には繋がりません。
しかし、保育の場合、事故の検証をすることは保育の質の向上に繋がります。
例えば、転倒によるけがの検証であれば、保育者の立ち位置や子どもの発達段階の理解や環境設定の適切性など多くの質に関わる振り返りを行うことができます。
こういったことは建設現場や工場における事故検証では行うことができません。

保育の質と安心・安全はトレードオフの関係か?
当たり前ですが、事故を防ぐことばかりを重要視してまうと保育の質は下がります。
極端なことを言えば事故を起こさない最も簡単な方法は「保育をしない」ことです。逆に言えば、良い保育をしようと思えば事故のリスクは大きくなるということです。
例えば、お散歩先でのけがや置き去り事故を防ぎたければお散歩に行かせなければいいし、大型遊具での転落事故を防ぎたければ遊具で遊ばせなければいいだけです。
お散歩先のけがのためにその後その公園で遊べなくなったり、遊具が使えなくなったというのはよく聞く話です。
単純に考えれば「保育の質」と「安心・安全」はトレードオフの関係になるように見えます。

安心・安全と保育の質を高いレベルでバランスさせる方法はチームワークと専門性とテクノロジー
一見トレードオフの関係に見える安心・安全と保育の質を高いレベルでバランスさせるのは保育者の専門性とチームワーク、そしてテクノロジーの活用だと思っています。
チームワーク
以前のブログでこう書きました。
社会福祉施設のサービスは、施設長のリーダーシップやマネジメントに大きく依存することから、施設長のレベルがそのまま施設の「質」のレベルと言っても過言ではありません。
保育はチームで行うものですが、保育施設の職員を単なる集団からチームにするのは施設長の責任です。保育者同士の連携が十分であれば防げた事故は驚くほど多くあります。その意味で施設長の責任は重大です。
専門性
もうひとつは保育者の専門性の向上です。子ども一人ひとりの発達段階の理解や保護者の状況、環境設定に関する知識等の専門性を高めることで事故を予防しながら質の高い保育の提供が可能になります。
事故が起こった遊具での活動を簡単に禁止したり制限するのではなく、事故のリスクのある遊具で遊びながらしっかりと事故を防ぐことは高い専門性を持った保育者でなければできないことです。
テクノロジー
最近は、保育業界もようやくICT化が少しずつですが浸透してきています。午睡時の各種センサーや安全対策用のシステムやツールが揃ってきており、各行政が安全対策のための補助金を用意しています。
各種の保育業務支援システムも出そろった感があり、以前はこれらについても行政が助成金を出すなどしていました。ちなみに当社が開発・販売している保育業務システムCCS+Proには事故報告書を作成する機能があります(CCS+PはIT賞も受賞しております!)。
これらのツールを有効に活用することで、保育者の負荷を下げながら子どもの安全対策ができ、また、余った時間を使って保育に関する勉強やチームビルディングができるようになると思っています。
また、これらの保育業務支援システムで蓄積されたデータを分析して、それを保育に活かすことも可能になっていきます。
このように、チームワーク、専門性、テクノロジーの活用が高いベルで実施されているようになって初めて、安心・安全を担保しつつ質の高い保育が提供できる施設となっていくのだと思います。なかなか簡単な道のりではありませんが・・・。
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