本人が書いたソーシャル・スキル・トレーニングの本

大人の発達障害の本です。本人は「ライフハック」と言っていますが、内容は自身の度重なる失敗から学習した広い意味でのソーシャル・スキル・トレーニング(SST)の紹介だと思います。

勿論、本来のSSTの考え方も具体的な手法も違うのですがそれでも内容は多くの発達障害やそれ以外の方にも十分役に立つものですし、「自己啓発本」としても十分実践的な内容だと感じました。

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術
KADOKAWA / 中経出版 (2018-05-25)
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以下が目次です。

第1章 自分を変えるな、「道具」に頼れ 【仕事】
第2章 全ての会社は「部族」である 【人間関係】
第3章 朝起きられず、夜寝られないあなたへ【生活習慣】
第4章 厄介な友、「薬・酒」とどう付き合うか【依存】
第5章 僕が「うつの底」から抜け出した方法【生存】

発達の偏りに対応する手法を編み出すまでのプロセス

皆さんは彼女や奥さんに「あなたに相談しているんじゃない。私の話を聞いて寄り添ってほしいだけ」と言われたことはありませんか?僕はあります。

例えば「Hack16 共感とは「苦労」と「努力」に理解を示してあげること」では、「奇妙な共感」と名付けた現象への対応としてこう書かれています。

世の中のほとんどの人にとって、「あなたの気持ちはわかる」という言葉は、実際とても軽いものなのです。本当に「わかる」必要などありありません。他人の気持ちなんてそもそも誰にもわかりません。それでも「わかる」と言ってあげることで人間は喜ぶのです。

借金玉.発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術(Kindleの位置No.1296-1297).KADOKAWA/中経出版.Kindle版.

筆者のやり方は、自身の発達の偏りに起因する生きる上での不自由さとそれに対処するための「原則」を見つけ出し、その原則にキャッチーな名前を付け(著者は名前を付けるのが得意)、自分の不得意な個々の場面で「原則」に活用した具体的な対策(対策にも名前を付ける)を作っていくというものです。

実際にこのやり方は発達障害者が社会にアジャストしてく場面で結構有効なプロセスなのかもしれないと感じました。

紹介されたいくつかの手法はなるほどと思うものも多く僕も使っています。若い時に実践していればもう少し楽に生きられたかもしれません(笑)。

ネーミングの面白さと大切さ

ちなみに、この本の面白さのひとつは筆者が生きづらさを感じる様々な場面やその対処方法に面白いネーミングをしているところです。例えば会社やコミュニティーを「部族」と呼び、部族にあるカルチャーや風習を「」と名付けその対処方法を解説します。

部族」や「奇妙な共感」の他にも「かばんぶっこみ」「見えない通貨」「言葉拾い」「茶番センサー」など面白い名前と使い方が書かれています。名前を付けるという行為は抽象化する行為ですから、この様な抽象化する能力が高いことが筆者を他者との大きな違いではないかと思います。

ドナ・ウィリアムズ「自閉症だった私へ」から現代へ

15年程前にドナ・ウィリアムズの「自閉症だった私へ」を読んだ当時は、自閉症や発達障害の当事者本人による自閉症の書籍というのはこの本以外ではニキ・リンコさんやその他少数の方達でした。

自閉症だったわたしへ (新潮文庫)
ドナ ウィリアムズ
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しかし、最近では自閉症や発達障害という名称が一般的になったこともあり、当事者の方々が書いた書籍は数多く出版されていますし、そのいくつかはベストセラーになっています。

そして2018年にはついに本人による「自己啓発本」が出版されベストセラーになるとは15年前とは隔世の感があります。

ユニバーサル・デザインとしてのライフハック

ユニバーサル・デザインではないですが、社会において障害者や高齢者にとって有効な手法は健常者にとっても有効な手法となります。

その考え方からすれば発達障害者が書いた「ライフハック」は健常者にとっても有効なはずで、発達障害者が書いた「自己啓発本」がこうしてベストセラーになるのも考えてみれば当たり前の話なのかも知れません。

ちなみにこの本はAmazon のKindle Unlimitedで見つけて読みました。単純に面白い本なのでUnlimitedで出る前に買っても良かったかもしれません。


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