経済産業省で情報処理振興課でソフトウェア産業振興関係の業務に従事し、調査統計グループ経済解析室長を歴任した後、2019年1月1日に株式会社social solutions 取締役に就任しました元経済産業省・石塚 康志氏にインタビューを行いました。今回はその第2回です。

第1回はこちら

「こどば化」の意味

ーー社員総会での“ことば化”というワードがすごく印象的でした。

石塚氏:当社の保育理念「一人でも多くの子どもが人間が生まれながらに持っている素晴らしい力を育むことに喜びを感じ笑顔と元気が溢れた園を創造すること」にもありますが「一人一人の子ども」に合わせた保育の実現を目指したいと思っています。

保育の現場では毎日一分一秒ごとにデータが生み出されています。具体的には当社の保育施設の業務支援システムであるChild Care Systemや、午睡時の子どもの状態を監視、記録するVEVOセンサーによって様々な記録がデータベースに蓄積されています。

例えば「〇月〇日にこんなことが出来ました」とか「△月△日にあんな風に遊んでいました」という発達記録を時系列で並べて見ると一定のパターンが見えてくることがあります。そこから意味が出てきます。

それを単に「〇月〇日○時○分に登園しました」「体温は〇℃でした」だけではなく、そのデータが示すパターンが何を意味してくるかをきちんと言葉にして、保育者や保護者の方に提供したいと思ってます。

様々なデータのパターンから“〇〇くんはこんなことをしたいんだ”とか“〇〇ちゃんはこういう状態なんだ”という納得感のある予測が得られます。

これは個々の保育者の経験に基づく「印象」ではなく、データに基づいた根拠(エビデンス)のある「予測」を伝えているのです。個人の印象でもなく、単なる数字でもない、データに基づいた言葉が必要になってくる。これが私のいう「ことば化」の意味です。

「相関関係」だけでも言えることは沢山ある

皆さん結構誤解をしますが、データ分析からは「因果関係」が出てきません。

あくまでもあるデータとデータの間に同じような動きをしているという相関があるだけで因果関係の立証というのは、メカニズムをすべて解明しなければ因果関係は立証できません。

ーー確かに相関関係と因果関係を区別できない人はいますね

しかし、相関を取るだけでも表現手法を考えれば言えることはたくさんあります。そういうことを「数字を数字」として扱うわけではなく、可視化や意味化して保育士や保護者に還元したい。

こうすることで、今の教育が抱えている一人ひとりの子どもにどう対応していくのかという一つのヒントになるのではと考えています。

150年前までは皆、異年齢で学習していた

「生物的な年齢」に縛られず、個々の発達を考慮する保育や教育を実践すれば、子どもたちはもう少し楽しく色々なことができるのかなとも思っているんです。

例えば、ある特定の能力について多くの子どものデータでそれを検証したとき、それぞれの子どもにそれぞれ個体差があり、この子は本当はこっちにいったらもっと楽しめるのかも知れないというヒントが掴めるのではと思っています。

ーーまさに一人ひとりに合わせた保育ですね。

私は無理に年齢で輪切りにする様な年齢別のクラス編成というのに少し疑問に思っていて、データで検証して世論を通して動かしていかないとと思っています

実際、今から150年以前までは「生まれた年を把握する」ことはできていませんでした。年齢ごとのクラス分けを言うのは人類にとって不変ではないんです。

ーー確かに寺子屋は異年齢の子ども達が一緒に学ぶ場所でした。

この様に今の保育を含めた教育システムが長い人類の歴史にとっては全く当たり前ではないのですが、残念なから行政にはそれを変える力はありません。

行政組織の限界と当社のこれから

行政組織は、その在り様やそれを取り巻くルールが全て決められいて、変えるのもすごく大変なんです。文科省は今の学校教育システムを円滑かつ維持することがミッションであり、変えることに対して内発的動機が生まれにくい構造を持っています。外発的な課題が発生し、課題に対して改善を求められて初めて変えるプロセスがスタートできる。

ーーこれからやってみたいことがありましたらお教えください。

石塚氏:global bridgeの最大の競争要因は直営の保育・介護施設を運営する一方で、それらを支援するITサービスも同時に行っていることです。

まずは当社の直営施設の皆さんにどれだけ価値を提供できるかで事業の在り様を精査します。次にそれを横展開として直営施設外の皆さんの保育や介護のためにどういうサポートができるかという観点から更なる事業の在り方を探っていきます。

今まで自分がやってきた制度設計のノウハウや、システム全般の知識、課題解決の経験を活かし、これまで当社で頑張ってきた多くの皆さんが作り上げた組織やサービスをさらに改善し、必要に応じて再構築することができればと考えています。

ーー今日はどうもありがとうございました


【プロフィール】
石塚 康志(いしづか・やすし)氏

1968年 東京生まれ。東京大学経済学部卒業

1992年 通商産業省(現経済産業省)入省
その後、調査業務、保安規制業務、家電産業担当等の部署に配属
家電リサイクル法の制定、悪質商法取締、消費者事故防止のための法整備など

1998年 機械情報産業局(当時)情報処理振興課においてソフトウェア産業振興関係業務に従事
オープンソフトウェアの振興策

2001年 石川県庁商工労働部産業政策課出向、公正取引委員会出向

2005年 商務情報政策局 情報処理振興課

2010年 通商政策局 企画調査室長
東日本大震災直後の通商関係をテーマに通商白書執筆

2011年 経済産業政策局 知的財産政策室長
複雑な文章となっている不正競争防止法の運用マニュアルの整備
技術流出の実態調査など

2016年 大臣官房調査統計グループ 経済解析室長
工業とサービス産業の日時統計数値の作成・公表が当該部署の従来業務であったが、「統計の持つ意味を分かり易く伝える」をモットーに、コンテンツを作成する部署であると
最適ミッションを再定義し、情報発信を進めた。

2018年 経済産業省退省


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