5月8日(木)および9日(金)に行われた一般社団法人 日本社会福祉マネジメント学会の東京都保育士等キャリアアップ研修 「幼児教育」の研修レポートです。
2018年の保育所保育指針の改定により、従来の「養護(生命の保持と情緒の安定)と教育(5領域)」に加え「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」や「3つの柱(「知識及び技能」「思考力,
さらにはアクティブラーニングや非認知能力(社会情動的スキル)が注目され、幼児教育についての考え方が大きく変わる時代を迎えています。

講師は広島大学大学院 教育学研究科 准教授 中坪史典 先生
講師は広島大学大学院 教育学研究科 准教授 中坪 史典 先生です。中坪先生のプロフィールを広島大学の紹介から一部引用します。
保育実践のフィールドワークを中心に、保育者の専門性の探求,保育カンファレンスや園内研修のデザイン、子どもの生活や遊びに関する研究を行っています。実践者と協働しながら、保育の奥深さに光を当てることをめざしています
中坪先生のブログはこちら
Fuminori Nakatsuboのブログ
https://ameblo.jp/nakatsub/
聞き手を引き込む語り口とワールド・カフェ等を使った講義の振り返りや共有などとともに、子どもや保育者に対する温かいまなざしは、中坪先生の人となりが良く表れた楽しい講義でした。

一日目の概要:幼児教育の意義と保育者の関わり
研修の概要をお伝えします。
一日目の前半は、幼児教育の意義についてアメリカのペリー介入実験(ペリー・プレスクール・プロジェクト)やイギリスのPEEPプロジェクト、マシュマロテスト等を紹介し、いわゆる社会情動的スキルを育む質の高い保育がその後の子どもの人生に大きく影響することを「保育プロセスの質評価スケール」を紹介しながら様々なデータを用いて説明を行いました。
後半は、幼児教育におけるカリキュラムマネジメントに関する話です。
保育者の意図通りに保育が展開されやすい「計画から始まるカリキュラム」と子どもの主体性が発揮されやすい「子ども理解から始まるカリキュラム」を比較し、保育者の意図・計画と子どもの主体性のバランスの重要性について解説しました。
幼児教育の意義
幼児教育に関する理解
幼児教育の指導計画、記録及び評価
幼児教育における保育者の関わり
幼児教育の指導計画、記録及び評価
幼児教育におけるカリキュラム・マネジメント
幼児教育の環境
適切な環境の構成と再構成
幼児の発達に応じた保育内容
個々の子どもの発達
自発的活動としての遊び
中坪先生は、保育実践におけるPDCAは大切であるとしつつもP(計画)の前にまずは「子どもの理解」が重要であり、結果ではなくプロセスとその子どもの経験を重視し、子どもの心情・意欲・態度を捉える保育の振り返りと子ども理解について協調されていました。
講義では子どもの理解をするための以下の2つの視点「安心度」と「夢中度」を用いて実際の映像を使いながら考え、それをワールドカフェ形式でグループディスカッションを行いました。
安心度:子どもはどれだけ居場所に心地良さを感じているか
夢中度:子どもはどれだけ活動に没頭しているか
ここで、安心度は「養護(情緒の安定)」にかかる評価であり、夢中度は「教育」にかかる評価として考えることができると思います。
安心度や夢中度は5段階のレベルで評定されますが、同じ動画を見ても保育者によってその評価結果は違います。
グループディスカッションの中でなぜ自分がこの評価をしたのかを説明し、相手がなぜこの評価をしたのかを聞くことで、自然と評価軸の摺合せが行われます。
受講者の様子を見て、ワールドカフェの手法を用いたこれらの作業は園内研修において非常に有効であると感じました。

また、中坪先生は子どもの安心度や夢中度を理解には「子どもの姿から保育実践を振り返ることに留意する」ことが重要として以下の倉橋惣三の言葉を紹介していたのが印象的でした。
泣いている子がある。
涙は拭いてやる。
泣いてはいけないという。
なぜ泣くのと尋ねる。
弱虫ねえという。…随分いろいろのことはいいもし、してやりもするが、ただ一つしてやらないことがある。
泣かずにいられない心もちへの共感である。
倉橋惣三

二日目の概要:幼児教育の環境と保育内容
二日目は、幼児期の教育と小学校との接続のためのアプローチカリキュラムについてと、かえで幼稚園のある運動会イベントをビデオで見ながら子どもと保育者の様子について考察しました。
幼児教育の意義
幼児教育に関する理解
幼児教育の環境
適切な環境の構成と再構成
小学校との接続
幼児教育におけるアプローチ・カリキュラム
幼児教育におけるスタート・カリキュラム幼児教育の環境
適切な環境の構成と再構成
幼児教育の指導計画、記録及び評価
幼児教育における保育者の関わり
かえで幼稚園の運動会イベント「箱んでハイタワー」は以下のDVDで確認することができます。
映像で見る主体的な遊びで育つ子ども あそんでぼくらは人間になる (見る・読む・わかるDVD BOOK)
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内容はあおぞら組とたいよう組がどちらが3分間の間にどれたけ箱を高く積むことができるかという「箱んでハイタワー」と命名された運動会の競技を通して子どもたちや保育者の関わりを観察するものです。
子どもたちは協力しながらアイデアを出し、失敗から学びを深め、本番の前の2回の練習試合で勝ち負けを経験しながら敗因を分析し、さらなるアイデアを出して運動会当日の本番を迎えます。
ちなみに上記のビデオは中坪先生がマレーシアの学会でこのビデオを紹介した際に、感銘を受けたUNESCOの職員が制作したテレビ局の協力をもとに作成したものです。
ナレーションが英語のため分かりづらい部分もありますが、登場人物はすべて日本語を話しているので大筋の流れは理解できると思います。
尚、詳細の内容及びネタばれは以下のリンク先で確認できます。(ネタばれ注意)
「幼児教育における「子ども中心主義」の理念に潜在する問題」中坪史典
http://www.js-cs.jp/wp-content/uploads/pdf/journal/21/cs2015_05.pdf
55ページの「3-2.「かえで幼稚園」の幼児教育」から「箱んでハイタワー」での活動の様子、そしてビデオでは流れていなかった運動会の後日談が記載されています。
ビデオにはありませんがマレーシアでの発表の後の質疑のコーナーでアあるメリカ人から「勝敗を付けるのは子どもの自己肯定感を損ねるのではないか?」という質問があったそうです。
中坪先生はかえで幼稚園の先生たちにこの質問を投げかけ、保育者としての考えを述べています。こちらも興味深く読むことができますから興味がある方は読んでみてください。
ちなみに、当研修では中坪先生から後日談の一部始終をお話しされていましたから、研修受講を検討されている方は、動画やリンク先の文章は読まず研修受講時に直接ご確認してみてください。

ワールドカフェ
冒頭にも書きましたが、ワールド・カフェの形式を利用した活発でリラックスした雰囲気の中で意見交換が行われていたと思います。
ワールドカフェは園内研修にも採用できる手法ですから今回受講された皆さんは園に戻って是非利用してみてはいかがでしょうか?
お問合せ先
企業名:株式会社global bridge HOLDINGS
部 署:広報PR室
担 当:石元
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