今年、2021年は保育業界にとって「転換の始まりの年」と言えそうです。
一時は大きな社会問題だった待機児童問題。行政の取り組みに加え、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって解消に向かっており、今年は東京都でも初めて1000人を割りました。
これからの保育園は「入れればどこでも」から、「選んで入る」時代へ。
そんな時代に生き残る保育園になるための「安定した保育園運営のためのオンラインセミナー」が8月7日に開かれました。
特色づくりと積極的な情報発信、ICT化は必須
オンラインセミナーは保育支援システム「Child Care System」の開発・販売を行う株式会社CHaiLDと、保育・幼児教育人材支援を行う株式会社NOTCH様、NTT東日本様との共催で行われました。
はじめに、NOTCH代表取締役・花村嘉信氏より保育園を取り巻く環境の変化と、保育士を目指す学生、保育サービスの利用者である園児・保護者から見た「選ばれる園になるためのポイント」についてお話いただきました。

株式会社NOTCHの花村代表取締役
同社は全国約600の保育養成校とつながっており、保育士を目指す学生の動向に詳しい花村氏は就職先を選ぶにあたって保育士が重視する点として、
- 労働時間・仕事量が適正になるように環境が整備されている
- 保育・教育の取り組みがしっかりと説明されている
- 人間関係のフォローの体制が整っている
の3つのポイントを指摘。労働時間・仕事量の適正化には、ICTを活用した保育支援システムの導入などによる業務効率化が有効であることを説明しました。また、保育・教育の取り組みは行事や独自の教育プログラムなど、園としての特色を持ち、それをしっかりと発信することの大切さを訴えました。行事の多さは仕事量に関係することから以前は敬遠されがちでしたが、現在では独自の取り組みがあることをプラスにとらえたり、「個(一人ひとりの園児)に寄り添える環境」であることを重視して就職先を選ぶ保育士が増えているとのこと。また、人間関係のトラブルによる離職は依然多いことから、メンターの配置など組織的なフォロー体制があるかどうかも大切だということでした。
一方、園児募集においては、依然として「保活」への関心は高く、自宅に近い、保育時間の融通が利くといった利便性が重視されているものの、今後は保育園の「質」が重視されるようになるとして「これまでは『入園がゴール』だったが今後は『卒園がゴール』になる」と指摘しました。

保育士と子ども・保護者の双方から選ばれる園のポイントは
- 危機管理から保育の実践までの体制整備と仕組みづくり
- 情報発信
- ICTを活用した体制の仕組み化
と総括していただきました。
一人ひとりに合った「保育の個別最適化」を実現へ
次にCHaiLD・CCS営業部の瀬口拓郎氏が登壇。グループ会社が運営するAIAI(あい・あい保育園)の特徴などについて説明したのち、保育支援システム「Child Care System」と、ICT化のメリットについて解説しました。

株式会社CHaiLDの瀬口氏
Child Care Systemの大きな特色は、保育士の勤務シフト作成や保育料計算などの事務作業の効率化はもとより、園児一人ひとりに応じた保育=保育の個別最適化を目指したシステムであることです。
具体的には、4500人の定員を持つAIAIで収集した子どものデータを基に、似た発達を示した子どものデータを抽出し、子どもの成長を予測することでその子に応じた保育を行い、能力を伸ばしていく保育が提供できるようになります。

また、お昼寝の際に園児のおむつに装着するセンサーによって、うつぶせ寝防止などの午睡チェックに加え、お腹の皮膚温度の記録から翌日の体調不良を予測する「発熱予測」といった健康を守るための機能も紹介されました。

Wi-Fi環境の整備で「新しい生活様式」に沿ったサービスも
最後にNTT東日本の大山比紗子氏が「保育園のICT化成功の秘訣」と題し、保育園における通信環境の整備や通信セキュリティの重要性について講演しました。

NTT東日本の大山氏
保育士不足解消のための施策の一環として、国も保育園に対してICT環境の整備を求め、補助金などでバックアップしている現状を解説。そのうえで、ICT環境の整備を行う上では、
- 人材面での環境整備
- ハード面での環境整備
- 機器の性能と現場運用のマッチング
の3つの課題があると指摘しました。

人材面での環境整備は、園内にいるICTに詳しい人に頼るだけではなく、サポート体制があるシステムや通信環境を整えることで解決できるということです。
また、ハード面では、Wi-Fi環境を整えることで職員室だけでなく保育室でもタブレットやスマートフォンなどの情報端末が利用できるようになります。すると保育支援システムが使えるようになるだけでなく、オンラインでの園見学、生活発表会などイベント動画の配信といった保護者向けのサービスを充実させることができるようになります。
また、近年増加傾向にある、日本語を母語としない園児や保護者とのコミュニケーションをスムーズに行うための翻訳ツールも使いやすくなるとのことでした。さらに、保育園では園児一人ひとりの個人情報などを扱うため、情報セキュリティ対策も合わせて行うことが大切だというお話でした。
一方、参加者アンケートでは、自園の課題が「社員教育」にあるとの回答が最も多く、次いで「特色のあるサービス」が少ないとの答えが続きました。こうした課題に対して今回のセミナーが「参考になった」という回答が9割以上となりました。
株式会社CHaiLDでは、今後も保育事業者を対象に、「選ばれる保育園」を目指すための参考となるセミナー等のイベントを開催していく予定です。