改めて、保育園の防災対策を考える「防災座談会」。本記事では、防災意識を高める取り組みの事例やコロナ禍での避難をどうするかなど、足立区の危機管理部 総合防災対策室 災害対策課長 会田さん、あい・あい保育園 高野園 福原施設長、そしてボランティアで市民消火隊指揮官を務める大河原さんにお話をしていただきました。

■自分で自分を守る意識が鍵。保育園・保護者・地域などつながりは密に。

大河原さん:わたしが防災の取り組みを始めたきっかけですが、地元が福島第一原発から南に16kmの楢葉町ということもあり、有事には人の繋がりや共助が大切だと痛感していました。今わたしが住んでいる地域は防災意識が高く、既に市民消火隊として防災活動をしていらしたPTA活動の先輩から「女性だけの隊を作るから入らない?」とお誘いいただいたのがきっかけです。
男性が防災活動をしているのはよく聞きますが、「平日の昼間ってパパは仕事でいないよね、女性たちも何か出来たほうがいいんじゃない?」という思いがありました。わたし自身も2児の母でなので、行政と親(地域住民)だけでなく、保育園と三位一体になって協力できることはないかな?と思っています。

あい・あい保育園 高野園 福原施設長

会田課長:保育園・保護者・地域などとつながりを密に作っておくのが大事ですよね。特に地震の時は同時多発的に被害が発生するので、行政は全体のことをやるのが優先ですし、まさに自助・共助が大事です。

大河原さん:例えば、過去、保育園などと一緒に行った防災の意識を高める取り組みは何かありますか?

会田課長:以前、区立の保育園で起震車を使った訓練を行いました。起震車は首がすわっていれば、抱っこで小さい子もできるので、ぜひ小さいお子さんがいらっしゃるご家庭の方も商業施設などで見かけたら参加してほしいです。けっこう揺れますので、本当に起きた時にどう対応したらいいのか保護者も意識改革にはなりますよね。これも、自助なんです。自助の意識を高めるため。自分で自分を守る意識が高まってくれれば。

福原施設長:当園も起震車を呼びたかったんですが、園庭はあるものの、車が通れる入口がなく断念しました…。子どもたちを通して保護者さんにも興味を持ってもらえるといいなと。

大河原さん:起こってほしくはないですが、実際に災害がないと危機意識というか自助の意識はなかなか芽生えないですもんね。東日本大震災のときや昨年の台風19号のとき、やっぱりそういった意識は高まったなと感じます。

■コロナ禍の避難所生活。乳児のミルクはどう確保する?

福原施設長:避難所の開設の仕方が水害と震災などでは違うと聞いたのですが具体的にはどう違うんですか?

会田課長:はい。水害の時は事前に準備ができるので、基本的には区と地域の避難所運営組織と小中学校の関係者の3者で避難所を運営します。また、避難者からボランティアも募って、みんなで開けていく。一方、震災は準備ができないので、区で避難所を開けることはできないんです。地域の避難所運営組織の方自ら学校を開けてもらうしかないんですよ。たとえば、扇小学校は3つの町会があり、この3つが避難所を開ける。だから、扇小学校に避難するなら、この町会の方と日ごろから連携を強化しておくといいですね。

 

大河原さん:避難所に避難するにしても家庭で2食分は持っていかないといけないんですよね?最近だと避難所で感染症対策の備品もストックしているのですか?

会田課長:そうです。水害時の避難では、ご家庭で2食分はご用意をお願いしています。お湯などは沸かせないので、カップラーメンなどはNGです。基本的な備蓄準備は区で行っています。今年は、非接触式体温計とかフェイスシールドとか、マスクとか感染症対策の物品を増やして備蓄の配備も十分になっていると思います。今は感染症の疑いのある方は別の居室に避難していただいたりと、感染症対策を含めた訓練も行っています。

福原施設長:避難所で、乳児用のミルクはどうしたらいいですか?液体ミルクは期限もすぐ来てしまうし、保存が難しく、避難の際もかさばってしまうので…。

会田課長:乳児のミルク用のお湯は準備できますので大丈夫ですよ。

福原施設長:安心しました。

大河原さん:備蓄であったりもそうですが、ご家庭でも自助の意識が高まればもっとよいですよね。

福原施設長:そうなんです。保護者の方の理解は園の課題でもあります。園の避難訓練の際、保護者の方に伝言ダイヤルのお試しをお願いしたのですが、1人しか聞いていなかったんですよ。お仕事されている方にとっては、負担もありますし、なかなか難しいです。

大河原さん:繰り返しお願いしていくというのが必要ですかね。

足立区の危機管理部 総合防災対策室 災害対策課長 会田さん

 

■保育園の避難確保計画、どのように作る?

福原施設長:論文で調べていくと水害(災害)のために命を守るためには4つの柱があって、地域交流、災害予測、日常防災、最後にマニュアル。それで、園には水害における具体的なマニュアルがなかったんです。マニュアルを作るために東京都の東京マイ・タイムラインを活用してアクションカードのようなものを作ることから始めました。ひな形のようなものがあれば、しっかりとしたものが作れると思うのですが…。

会田課長:そうですね。区ではアンケートに答えていけば、要配慮者利用施設の避難確保計画が作れるように支援を行っています。例えば、保育園の周りの環境、どこにリスクがあって、どこに避難すればいいとか、その辺を埋めていけば完成できるように。荒川下流河川事務所では避難確保計画の作成手引きのような動画がYouTubeで出ていると思います。それも参考にしていただければ。
https://www.ktr.mlit.go.jp/arage/arage00964.html

大河原さん:なるほど、こういった動画があるんですね。非常に参考になります!

■防災座談会を終えて…

大河原さん:本日はありがとうございます。私は葛飾区で活動していますが、足立区がどんなことされているか知ることができてよかったと思います。地域との連携が必要なのだと改めて思いました。園と行政と地域を繋ぐ取り組みが今後もできればいいと思いました。

福原施設長:私自身がもっと行動していかなければならないなと感じました。園の中での避難訓練や備えはしているのですが、もっと外部からの情報を集めたり、地域の人と関わったり、そういう行動がまだまだ足りないなと。今後も、地域のかたと連携をとって保育園の災害対策をしていきます。

会田課長:お話しができてうれしかったです。何よりも“自助”が大切という考え方です。地域の方も自分の身を守りながら、他の人の助けになる共助の考えも持ってもらえるといいなと感じます。足立区としては、避難所の受け入れは体制を整えること、そして3密を避けるためにも分散避難の考えをもっと広めていきたい。分散避難は、皆さんに協力していただく必要があるので、ご理解いただきながら進めていきたいと思います。

ボランティアで市民消火隊指揮官を務める大河原さん

 

参加者の皆様、ありがとうございました。コロナ禍になり、地域の方とのつながりや保護者様のとのつながりを持つのが難しい状況が続いています。しかし、どんな状況下でも、子どもを「みんなで守る」をテーマに、安心して預けていただける保育園運営ができるよう、防災意識を高める取り組みを今後も行っていきたいと思います。

 

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