今回紹介するのは2016年に千葉県成田市に開園した「AIAI 本三里塚園」です。取材は進級式の日で、子どもたちの笑い声であふれていました。武藤施設長とパート職員の石田先生にお話をお聞きしました。

先生方が熱演!大盛り上がりの進級式

——進級式を見学させてもらいました。マジックや人形劇など盛りだくさんの内容でしたね
武藤進級式の主役は子どもたちです。以前は、入園式と進級式が一緒で保護者様も招待して、“セレモニー”といった感じだったんです。でも、ある時ふと「保育園は随時入園する子がいるのに、その子の入園式がないのは変だな。それなら進級式は園生活に慣れたころ、子どもたちが楽しめるように開いてはどうだろう?」と思ったんです。

進級式で、先生のマジックを見る子どもたち

武藤:進級式のほかにも、ひな祭りやクリスマスなど季節行事には力を入れています。職員からのプレゼントとして子どもたちに楽しんでほしいので、みんなで案を出し合って考えています。

――行事に力を入れるのはなぜですか?

武藤:行事は子どもたちの成長の糧になります。楽しい思い出を通して感性が育まれるし、伝統的な行事では日本や世界の文化も学べます。自分の成長を披露する発表会のような行事では、頑張る喜びやお友達と協力する楽しさも実感できると思います。

誕生会も大切な行事。自分は大切な存在なのだという自覚が子どもに生まれます

――行事のプログラムはどうやって考えるのですか?

武藤:行事ごとに、担当の先生を決めて手遊びの延長で考えるようにしました。私は先生たちに「子どもたちを楽しませるには、まず、自分たちが楽しもうね」という一点をお願いしました。若い先生には負担かな?とも思いましたが、「このようなものを考えましたが、どうでしょう?」と積極的に相談してくれました。しかも、みんな芸達者!行事があるたびにすごく盛り上がって、いつも感心してしまいます。

――今日、マジックを披露していた石田先生もとても上手でした!

石田:ありがとうございます。実は、私はピアノが苦手なんです。なので、ピアノは得意な先生にお任せして、私は出し物をやろうと思いました。息子が手品好きでマジックの本を読んでいたのを思いだして「これをやってみよう」と思いました。

――マジックはずいぶん、練習されたんですか?

石田:家族を相手に練習したのですが、これが意外とおもしろくて自分でもハマりました!現在、レパートリーは4つです。

進級式でマジックを披露する石田先生

子どもたちが大好きな出し物「ブートン5 こぶたのダンス」

武藤:石田先生は開設時から当園に勤めていて、私よりも古株なんです。障害児保育施設での経験もあって、みんなからの信頼も厚いんですよ

石田:私こそ、みんなに助けてもらっています。当園は、得意なことは率先してやり、苦手な分野は助け合う雰囲気があります。出産で一時保育の仕事を離れた私ですが、復帰してよかった。保育の仕事はやはりやりがいがあります。

子どもたちの笑顔が保育士の原動力

――武藤施設長は幼稚園での勤務経験もあるそうですね

武藤:前職はこども園で、その前は幼稚園に勤務していました。子どもたちが何かに挑戦して達成感を得た時に見せるキラキラした瞳と笑顔は、保育士にとっても達成感になり、その喜びはかけがえのないものです。私自身、その感動を糧にこの仕事を続けてきました。これからも職員全員で子どもたちの成長を喜べる園にしていきたいです。

――園で大事にしていることは何ですか?

武藤:子どもたちの主体性を重んじる保育をしていきたいと思っています。「主体性」というのは子どもが好き勝手に行動するのではなく、安全面や人間関係などの基本的なルールを学びながら自分の意志で行動する力です。そのためには、保育士と子どもたちの信頼関係が大切。職員たちは、日々、子どもたちの遊びを見守り、スキンシップや適切な声かけをして信頼関係を築いています。「ここは安心して過ごせる場所なんだ」と思ってもらえる園でありたいですね。

―­―毎日の関わりが大切なのですね。成長を感じる場面はどんな時ですか?

武藤:やはり(年度末に行われる)生活発表会ですね。まさに1年間の保育の成果です。昨年はコロナ禍の影響で縮小した行事もありましたから、今年は子どもたちの笑顔を思う存分見たいですね。

発表会の準備は直前に始めるのではなく、1年間のカリキュラムを考え、保育計画を立て、さらに子どもたちと発表会で披露するものを考え、そして本番を迎えます。

今年の春の「なのはな組」の生活発表会

1日1回の対話がモットー。ついつい長話になることも

――2021年の園目標を教えてください

武藤:「整理整頓」「報告、連絡、相談」「インスペクトS(*1)をとる」の3つです。

——とてもシンプルですね。

武藤:当園の職員はとにかくフットワークがいいので、シンプルなほうがわかりやすいし、当園らしいかなと思いました。

笑顔が印象的な武藤施設長

——施設長自身の目標はなんですか?

武藤:毎日、保育士の誰かと話しをするようにしています。「5分でもいいから、1日1回、1対1で私と話して」と職員に言っています。5分10分のつもりが、時には30分ぐらいになってしまうこともあります。

——たとえば、石田先生は武藤施設長とどんなことを話すのですか?

石田:その日の保育の話が多いですね。私は支援が必要な子の担当ですが、その子の一日の様子や他の子との関わりとか、話題はつきません。施設長はすごく勉強なさっているので、アドバイスをいただくことも多いです。

武藤:「今日、こういう気づきがありました!」と報告してくれるベテラン職員や、「先生がおっしゃっていた事、あの時は分らなかったけど今日わかりました!」と、嬉しそうに話してくれる若い職員もいます。そんな時は盛り上がって、ついつい長くなってしまいます。

——ベテランの先生でも、新しい気づきがあるのですか?
武藤:もちろんです。私も含め、年齢や経験に関係なく新しく気づかされることは多いです。保育という仕事は奥が深いし、終わりはありませんから

「達成感を得た時の子どものキラキラした瞳と笑顔が、保育士の達成感にもなる」と言う武藤施設長。石田先生は「毎日違ったことに気づくから保育は楽しい」とも。子どもたちと一緒に先生方も成長し続ける園だと感じました。

(*1)インスペクト:行政監査や第三者評価とは別に社内独自の「インスペクト」と呼ばれる監査制度を全施設に対し実施しています。「環境」「書類」「運営」の3つの視点から合計240を超える監査項目に対して行い、点数に応じてS~Fの評価をします。本制度はより良い施設環境構築のための定量的な指標となっています。

AIAI(あい・あい保育園)では、「もうひとつの家」をコンセプトに、首都圏や大阪で79の認可保育園(2021年6月現在)を展開しています。それぞれの園が地域に根差し、さまざまな取り組みをしています。そんなAIAI各園の様子を順番に紹介しています。

 

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