園紹介の第15回目は足立区にある「あい・あい保育園 高野園」です。
「あい・あい保育園 高野園」は日暮里・舎人ライナーの扇大橋駅から徒歩4分。尾久橋通り沿いを高野駅のほうへ進むと左手にAIAIの文字が見えてきます。閑静な住宅街の中にある高野園はミニAINIと砂場のある園庭があり、穏やかな雰囲気です。そんな高野園のことを福原施設長と調理の村岡さんと避難訓練係の張さんに伺いました。

もりもり食べてほしい!園児が楽しみにしている保育園の給食で調理師さんが行っている工夫とは?

Q, コロナ禍において、給食の提供にも変化があったとお伺いしました。具体的にはどんな変化があったのですか?
村岡以前は、給食を少なめに盛り付けて、完食した達成感を感じてもらって、おかわりをする喜びから食の楽しさを味わえるようにしていました。しかし、今はコロナ対策ということでその場で量の調節ができなくなりました…。
福原施設長:以前はおかわりが欲しいと言えば、提供することもできたんですが、食事中の配膳も今はないので、最初から多めに盛り付けるようにしています。また、以前は保育者も向かい合って給食を食べて、おいしさや楽しさを共有することができたのですが、それもできなくなりました。

Q,なるほど。おかわりがその場でできないと、食べる量の調節が難しそうですね。
福原施設長コロナの影響で登園自粛明けに給食の残食が多くなったと感じましたね。登園できるようになっても、お散歩にいくこともできなかったので、身体を思いきり動かして遊べず、おなかが空いてないのかもしれない…と原因はいくつかあったと思います。
村岡:そうですね。要因はいろいろありますが、まず残食を減らすために何ができるのか?と考え、環境を変えてみよう、ということで今回“お弁当給食”をやってみようということになったんです!

 

Q,お弁当給食ですか!それは面白いですね。どんな工夫をしたんですか?
村岡その日の給食のメニューは、パンとナゲットだったのですが、食べやすいようにハンバーガースタイルにしました。野菜も挟んだのですが、いつもは絶対お野菜を食べない子ももりもり食べてくれました!
福原施設長:運動会当日はレジャーシートをお家から持ってきてもらって、レジャーシートにそれぞれ座って“お弁当給食”を食べたんですよ。お弁当箱の蓋に、“運動会がんばったね”の折り紙のメダルが貼ってあって、子どもたちもニコニコでした。運動会が終わってから「お弁当もう一回食べたい!」と言う声を聞きましたね。

Q,お野菜を食べられたという経験は、園児にとって自信につながりそうですね!
村岡今後の残食量に影響があるかは分かりませんが、園児たちが笑顔で食べてくれて、良かったなと思います。普段から、給食の時間は保育室へ行って、「少し噛むのが苦手かな?」という言う子には次からは小さく切ってあげるようにしたり、直接園児に「どうしたの?」「食べたくなかったのかな?」と聞いてみることもあります。食べない理由はそれぞれ違うので、コミュニケーションを取って園児ごとに配膳の量や切り方を変えて盛り付けています。

Q,今後はどんなふうに給食を提供していきたいですか?
村岡環境を変えて、園庭とか外で、学年を超えて一緒に食べられるようになるといいなと思います。今、ワイワイ食べるということ自体が難しくなってしまっているので…。元気いっぱい、子どもたちにはご飯をたくさん食べてほしいので、今後も工夫しながら頑張っていきたいです!

 

抜き打ち訓練での“失敗”を糧に。「職員全員で園児を守る園でありたい」

Q,避難訓練にも力を入れているそうですね。
福原施設長はい。保育園では火災・地震・水害・不審者対応などの毎月避難訓練をすることが義務付けられているんですが、あい・あい保育園 高野園では開園当初から水消火器を導入したり、警察の方や消防士さんをお呼びしたり、救命救急講習(心肺蘇生の方法、AEDを実際に操作するなど)も行いました。園児にも落ち着いて避難できるように教えますが、どちらかと言えば、職員の“訓練”と考えて取り組んでいます。園児の命を守るのは、職員ですから。

 

避難訓練は経験年数関係なく、自分が率先して行うという意識で全員が取り組んでいますね。今年度に入ってからは、ほぼ施設長がいない想定で、時間やシーンを変えて企画書を作成しています。

Q,なるほど。ちなみに水消火器を使った訓練と普通の消火器を使った訓練とは何が違うのですか?
福原施設長水消火器の構造はほとんど普通の消火器と同じですが、中身は水です。本物の消火器は消火剤が入っているため、避難訓練の際に、実際に消火器の栓を引き抜いて使うことができないんです。実際にやったことがないことをいざ火を目の前にして行うのは非常に難しいですよね。栓の抜き方がわからなかったり、火から距離のあるところで栓を抜いてしまって、肝心の消火をするときに消火剤が半分まで減っていたりすると聞きました。当園の職員は全員、実際の消火器の使い方を体験しています。

 

Q, 経験しているか、していないかで意識も変わりますよね。避難訓練で印象に残ったエピソードはありますか?
福原施設長園児が登園している時間に抜き打ちでやった避難訓練はすごく印象に残っています。園児は全員登園しておらず、早番の先生しかいない状態で行いました。ある程度パニックにはなると想定はしていたのですが、想像以上に何もできなったんです。

Q,抜き打ちで行ったときは、どんなことができなかったんですか?
福原施設長いろいろありますが、特に問題になったのは

①正確な人数確認ができない。
登園中の抜き打ちだったので誰が登園していて、登園していないのかがわからず、人数も正しく確認できない。園長も主任もいない想定だったので人数を取りまとめるひとがいない。
②防災頭巾の場所がわからない。
合同保育中だったので、いつもと違う保育室にいた職員が防災頭巾の場所がわからない。

の2つです。この避難訓練の後、すぐに対策を講じました。

Q,どんなふうに対策を行ったのですか?
福原施設長いろいろありますが、まずは人数確認の定義を決めましたね。保育者は逐次園児の人数を確認するんですが、ただ数えるだけでは意味はないんです。登降園中など人数に変動が出るときに、何をもって正確な人数とするのかを全員で共有し、誰が人数を取りまとめるのかという基準も設けました。防災頭巾の場所も写真付けて、園児にもわかるような形で配置しました。

Q,なるほど。先生方の意識も変わりましたか?
福原施設長この訓練は先生たちもハッとしていましたし、園の一番の課題と捉えてもっと真剣に取り組もうと考えるようになりましたね。
今年度は全員がしっかりと当事者意識を持って取り組んでいると思いますよ。避難訓練のたびに反省や評価をして、建設的な意見を出し合っています。例えば、避難をアナウンスする子機が使えないときなど、いつも通りにできないシーンがあるかもしれない。そういうときもあるものを最大限に活用してやろう!ということで案を出し合っています。

Q,なるほど。最後に一言お願いします!
福原施設長いつ起こるかわからない災害に対して、確実に命を守る園でありたいけれど、“これができたから、安全ですね”とは言い切れない。避難訓練の取り組みの“一つのゴール”は自分がいなくても、正しい判断をして、正しく避難できること。だからこそ、訓練で失敗して、その時の気づきを積み重ねて、どんな場面でも園児を守れるよう常に危機管理の意識を持って訓練に取り組んでいきたいと思います。

あい・あい保育園 高野園では、非常事態の際に園児8~10人を運ぶ避難車(散歩車)の使い方を調理師や看護師にも共有するなどの講習を行い、実際に園児を乗せて近くの公園まで避難する訓練も行っているそう。「より実践に近い形での訓練を積み重ねています!」と語る福原施設長の言葉から園に関わる全員で園児の命を守りたい!という固い決意が伝わってきました。

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