2020年11月22日、品川区のオープンキッチンにて『給食の鉄人』の決勝戦が開催されました。『給食の鉄人』はレシピ開発を通して乳幼児の成長や発達段階に合わせた食事、そして保育所での給食提供における必要栄養価のさらなる理解を目的として、当社が運営する認可保育所・小規模保育施設に勤務する調理員たちが「給食で提供できるレシピ」をそれぞれ考案し、アイディア性、味、プレゼンテーション力などの知識や技術を競い、No.1のチームを決めるイベントです。

 

レシピ制作にあたっては、100食以上の大量調理が可能であること、保育所の提供する給食として、不適切な食材を使用しないこと、指定範囲内の栄養価に収めることなど、保育園給食としての条件が求められ、一次審査ではりんご、にんじんなどのテーマ食材をつかったお誕生日ケーキレシピを考案し、決勝戦では肉をテーマ食材とした主菜レシピを考案しました。
あい・あい保育園72施設が参加したなかで決勝戦にコマを進めたのは「あい・あい保育園 西日暮里一丁目園」「あい・あい保育園 上志津園」「あい・あい保育園 高野園」「あい・あい保育園 君津園」「あい・あい保育園 新大塚園」の5園です。

決勝戦開始前に参加チームに心境を伺ったところ、
「自信はあります!いつもは3人で仕事をしていますが、今日は来られないあやね先生の分も頑張りたいです」(西日暮里一丁目園 大槻さん)
「秘密のソースが鍵になると思います!テッペンとるぞ!」(高野園 村岡さん)
「普段園では作らないもので大量調理でもふさわしい献立を考えています。普段通りできればいいなと思います。」(君津園 坂元さん)
などと意気込みが語られ、皆緊張しながらも、やる気満々の様子でした。

優勝した上志津園チーム

『給食の鉄人』の決勝戦の審査員はNPO日本食育インストラクター協会事務局長の岡田記世子さん、株式会社ミールケア取締役副社長の丸山寛典さん、一般財団法人 日本educe食育総合研究所 認定講師で管理栄養士の鷺さん、そして当社とは親交の深い現役保育士You Tuberのてぃ先生です。てぃ先生は「今日は辛口で審査したいと思います」とコメントされ、会場から笑いがこぼれる場面も。
また、開会の挨拶では当社運営部長の木本から「『給食の鉄人』は保育園給食においての安全性を高め、調理員の知識技術向上やチームワークの向上が目的。これまで頑張ってきたことを存分に発揮してほしい」とイベントの趣旨が改めて語られ、本大会がスタートしました。

各々が調理を手際よくすすめるなか、審査員からは調理員へ質問が飛び交い、調理のポイントやレシピ制作の背景などが語られました。

各参加チームの料理は以下の通りです。

■あい・あい保育園 西日暮里一丁目園『カラフルライオンバーグ』

【調理員から】
ハンバーグを使った肉料理の時は残食が少なく、3歳以上児全員が「ハンバーグが好き」と答えたため、ハンバーグにした。そして、保護者に園内アンケートを取り、嫌いな野菜を教えてくださいと質問したところ、トマトやナスを抑え、ピーマンとの回答が1位に。ピーマンはぜひ子どもたちに食べてほしい食材なので、みじん切りし、下茹ですることで苦さを抑えた。見た目は子どもたちに喜んでもらいたいという想いから2色のパプリカとコーンソースで色鮮やかにした。工夫した点はありきたりなハンバーグに個性をだすソース。園内アンケートでトウモロコシの回答が3位という結果だったため、黄色のたてがみをトウモロコシで表現することにした。ライオンのように大きく、強く、たくましく育ってほしいという想いを込めてライオンの形にした。

■あい・あい保育園 上志津園『鶏肉のカリカリ昆布マヨ焼き』

【調理員から】
レシピ開発で工夫した点は子どもたちに何が入っているのか興味を持ってもらえるような見た目とそうめんのカリカリとした触感。子どもたちによく噛んで食べてほしいという願いからあえてそうめんの触感を残した。また大量調理のポイントとして、どれだけ簡単に作れるか?を大切にして、マヨネーズと塩昆布を和えるだけでほぼ味が決まるレシピを考案。普段は鶏肉の面に小麦粉をはたいて、マヨネーズが垂れないようにしているが、今回はチーズを“のり”の役目として使った。保護者アンケートをとると、「時短メニューが知りたい」という回答が毎年多いので、「時短」にこだわった。レシピ考案までは、最初にそうめんを衣にして揚げてみたが、保育士さんから「固い!」「口の中に刺さる!」という意見があったため改良を重ねた。

■あい・あい保育園 高野園『チキンdeハッピー~ひみつのソース~』

【調理員から】
このレシピを考案した理由は当園に豚肉除去の園児がいたから。除去食の園児もおいしく楽しく食べてもらいたいという想いがあった。また、子どもたちは目で見た印象でこれは好き、これは食べないときめてしまう子も少なくない。味覚を通して、オレンジが入っていないのに、オレンジの味がしたと気づき、お家に帰って話をすることで、保護者の方にも給食に興味を持ってもらい、子どもとのコミュニケーションにつながってほしい。ぱさぱさになりがちな鶏肉はオレンジで漬け込み、柔らかくし、旬の野菜のレンコンを取り入れ、季節感も。レンコンをパリパリに揚げれば、スナック感覚で食べることができる。大量調理における工夫はだれにでも作れる作りやすさ。作り慣れた唐揚げにオレンジを加えアレンジするだけ。レンコンも唐揚げを揚げるついでに揚げてしまえるので手間を省ける。仕様食材5品の中で栄養価を基準の範囲内に作るのが難しかった。ゴマとブロッコリーを加えることでカルシウムを多く取り入れ、レンコンをスライスすることで存在感を出した。

■あい・あい保育園 君津園『焼きロールキャベツ』

【調理員から】
ロールキャベツという料理がある、ということを子どもたちに知ってもらいたかった。大きいキャベツの葉一枚で包むと子どもには食べにくいので、キャベツを千切りにすることで食べやすくした。また、生のまま焼くことで、キャベツのしゃきしゃきした触感を楽しんでもらえるようにした。大量調理の工夫としては、天板に作った肉だねを並べ、もしくは時間がない時や調理員が少ない時はそのまま敷き詰めて、その上からキャベツを載せるだけで調理が可能。また、焼きあがったあとも、キャベツが千切りの状態なのでカットがしやすい。

■あい・あい保育園 新大塚園『巻かないロールキャベツ』

【調理員から】
ひき肉と玉ねぎと豆腐で作った肉だねとキャベツを交互に敷き詰めた。キャベツをお肉で挟むことで野菜が嫌いな子でも食べられる工夫をした。キャベツを切る過程で、食べやすくする一方、ある程度咀嚼もできるように切った。また、3種類の野菜とキノコを使うことで彩りよくした。お肉がテーマではあるけれど、野菜も食べてほしいという想いも込めて、このメニューにした。フードプロセッサーなどを活用することでさらに時間を短縮して作ることも可能。お肉だけでなく、豆腐を使うことでボリューム感を出し、コストを抑える工夫も。栄養価を規定内に収めることが難しく、特に塩分を抑えることに苦労した。

とプレゼンでは、それぞれに園児への想いや大量調理の工夫などが語られました。

閉会式、会場ではみな息をのんで、いよいよ結果発表です。

3位 あい・あい保育園 新大塚園『巻かないロールキャベツ』
2位 あい・あい保育園 君津園『焼きロールキャベツ』
1位 あい・あい保育園 上志津園『鶏肉のカリカリ昆布マヨ焼き』

という結果に。
1位の上志津園の『鶏肉のカリカリ昆布マヨ焼き』に対し、てぃ先生からは「とてもおいしかったです。作っている最中も余裕がある様子でしたが、それは作り方が簡単だったからできていたんだなと思います。」岡田さんは「今日はお肉がテーマだったと思いますが、この衣は他の食材にも生かせて応用も利くなと思いました。そうめんが入っているのがポイントだと思うが、それがタイトルに入っていないのは、「何が入っているのかな?」と楽しませる意味も含まれているとわかり、納得しました」とコメント。どの保育園でもできる再現性と味、時短で作れる点などが高評価されました。

最後に貞松社長は「この『給食の鉄人』はもともと栄養士のキャリアプランをどうするか、というところからスタートしました。『給食の鉄人』は多岐にわたる項目で評価をつけられ、1,2位が数点差で決まってしまいます。客観視されることで、より向上心が出てくるのではと思います。それぞれ持ち味があり、素敵な栄養士さんたちがおいしいものを作ってくれて、社長としてはとても嬉しかったです。この場に残っていることが本当に素晴らしいことです。この結果にめげずに、次回も頑張ってほしいと思います。」とコメントし、閉会となりました。

上志津園の豊田さんと圓城寺さんは「『給食の鉄人』を通し、園のみんなに協力してもらって優勝することができました。これからも子どもたちのため、そして、給食を食べてくれるみんなのために美味しい給食を作っていきたい」と抱負を述べました。