保育所等訪問支援の利用障壁の高さを解明する調査研究結果について
2024年3月21日
AIAIグループ株式会社
(証券コード6557 東証グロース)
認可保育所AIAI NURSERY、児童発達支援AIAI PLUSを東京都23区、千葉県、神奈川県、大阪市市内で展開しているAIAIグループ(東京都墨田区、代表取締役社長兼CEO貞松成)では、保育、療育、教育を一体的に提供する「AIAI三育圏」を基本戦略とした事業展開を一層強化するため、保育所等訪問支援の利用障壁の高さを解明すべく、保護者が保育所等訪問支援を依頼するまでのプロセスについて研究しました。
「AIAI三育圏」とは、AIAI NURSERYが提供する「保育」、AIAI PLUSが提供する「療育」、株式会社CHaiLDが提供する「教育」の3つの事業のシナジー効果を最大化させる取り組みです。保育、療育、教育のそれぞれの事業が互いに補完し合い、より多様な子どもとその保護者へのサポートを実現するとともに、グループの生産性の最大化を実現します。
1. 研究着手の背景
2012年より、国が保育所等に外部から専門の訪問支援員を派遣して子どもや保育者を支援する児童福祉法の制度「保育所等訪問支援」(以下「訪問支援」)を開始してから、認可保育所と児童発達支援を事業展開する当社グループでは訪問支援に力を入れてまいりました。しかし、訪問支援に取り組むなかで保育所での生活に子どもが適応していない事実を保護者が認識していないケースや、その事実を保育者から保護者に伝達したとしても訪問支援員を呼ぶほどではないと保護者が判断する等のケースがあり、結果として保護者が訪問支援を依頼するまでに至らない事例が散見されました。
厚生労働省は放課後等デイサービス事業と比べて訪問支援が十分に普及していないことに関して問題視していますが、その原因の所在を人材や報酬の観点等に位置付けています 。しかし本研究では、利用者である保護者の状況によって訪問支援の開始に至らないという事実があるのではないかという仮説を立てて検証を行いました。
2. 今後の展望について
本調査では訪問支援を依頼した経験のある4名の保護者にインタビューし、その心理過程や行動の過程等を複線径路等至性モデリング(Trajectory Equifinality Modeling: TEM)を用いて分析した結果、保護者が訪問支援を依頼するまでにいくつかの共通したプロセス(障壁)を経ることがわかりました。本研究ではこれらの障壁を明らかにした上で、相談援助につなげられることを提示しました。
第一の障壁は、ふつうに育ってほしいという価値観を持つ保護者にとっては、子どもが生活に困っていることを想像することが難しく、「自分の子どもに障害があるはずがない」「支援が必要であるはずがない」という心理状態になり、支援の必要性を受け入れることが困難であることでしたが、療育への肯定的な見方と専門家からの指摘や医師からの進言、関係者との保護者面談及び子どもへの期待等がつながった結果、保護者は子どもに療育が必要であることに理解を示すことがわかりました。
第二の障壁は、手続き上の流れや必要書類について行政関係者から保護者への案内が不親切な場合に起きていました。不親切な場合とは、行政における手続きの遅延などもあるものの、むしろ療育の決定について、本来は医師の意見書や発達検査の結果等の客観的な根拠に基づいて行われるべきところが、発達支援センターの相談員や市役所の窓口担当者による「この子に支援は必要ないのではないか」という懐疑的な発言などが保護者に徒労感を覚えさせたり、サービスを利用させない・受給者証を取得させないという圧力のようなものを感じさせたりしていたことです。
これらが訪問支援の利用障壁を高くしていたことから、当社グループにおいては、保育士、相談員、支援員及び医療関係者といった専門職同士が連携し、AIAI NURSERYから当該園児の園内における発達面の様子を医療機関や役所に申し伝えることにより診断書と受給者証が滞りなく発行されるようにし、保護者の精神的な負担を取り除くオペレーションの構築に至りました。
なお、本調査結果は学術雑誌に原著論文として掲載されております 。
3. 研究者
大村 拓史・学士(教育学) AIAI Child Care株式会社
貞松 成 ・博士(教育学) AIAIグループ株式会社代表取締役社長兼CEO
中坪 史典・博士(教育学) 広島大学大学院人間社会科学研究科教授
4. 会社概要
会社名称 | AIAIグループ株式会社 |
本社住所 | 東京都墨田区錦糸一丁目2番1号 |
代表者名 | 代表取締役社長兼CEO 貞松 成 |
事業内容 | グループ会社の経営管理、並びにそれに付帯する業務 |
会社名称 | AIAI Child Care株式会社 |
本社住所 | 東京都墨田区錦糸一丁目2番1号 |
代表者名 | 代表取締役社長兼CEO 貞松 成 |
事業内容 | 認可保育所、児童発達支援事業所及び保育所等訪問支援の運営等 |
1 厚生労働省『平成28年度障害者総合福祉推進事業 保育所等訪問支援の効果的な実施等に関する調査研究 報告書』
2 保護者が保育所等訪問支援を依頼するまでのプロセス-複線径路等至性モデリング(TEM)を用いて