情報化時代において事故を低減させる鍵は「データ」。事業者や消費者がデータ収集への意識を向上させることで“危険”の見える化にも
11月は乳幼児突然死症候群(SIDS)の対策強化月間です。そこで、乳幼児の午睡を見守る午睡センサーを展開する当社の関連会社(株)ソーシャル ソリューションズ(以下ss)が、11月25日に『SIDS対策強化月間におけるシンポジウム』を開催しました。
新型コロナの影響を考え、シンポジウムの会場は最小限の来場者とし、オンラインによる開催となりました。
子どもの安全を守るため、「事故低減への社会サイクル」を利用
第1部は基調講演として、国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張センター研究センター長 持丸正明氏が登壇し「子どもの安全」について事故低減への社会のサイクルをテーマに講演してくださいました。これまで持丸氏が実際に関わったさまざまな事例を上げながら、どうしたら子どもの命を守れる社会になるかについての内容です。
さて、このサイクルとは、事故が起こってしまった時、まず「事故に関する情報収集をする(①)」、そして「原因究明と対策(②)」を行ったら、関係者との「コミュニケーション(③)」をとることで「行動変容(④)」が起こり、事故を防ぐことにつながるというものです。
子どもによる使い捨てライターの火災事故を防ぐための低減サイクルとは…
例として挙げたのは、年間30人ものお子さんが犠牲になっていたという使い捨てライターによる火災事故です。まず、なぜ事故につながったのかというデータを収集し(①)、子どもの力では火をつけられないようにライターを改良する(②)対策を提言。行政や消費者団体、業界に働きかけることで(③)、安全装置基準の標準化法規制が整備され(④)ました。現在、使い捨てライターは子どもでは火がつけにくい商品になり事故低減につながったとのことです。その他にも、母親が危険性を指摘したのがきっかけになった子ども衣服の引きひもによる例などを紹介されました。
持丸氏は、最後に「事故を低減させるためには、背景や原因の情報収集が大切です。情報さえあればAIによるデータ分析ができるからです。しかし、事故は突発的に起こるもので行政だけで防ぐのは無理があります。今はネットやスマートフォンが普及しており、事故の情報収集がしやすい時代。子どもたちの事故を防ぐためにも、ぜひ事業者や消費者にも参加意識を向上させてほしいと思います。そして、安全な社会のためのアーリーアダプターになってほしいと思います」とおっしゃっていました。
子どもと保育士のために開発されたssの午睡センサー。普及するためには何が必要か
第2部は、持丸氏、元オリンピック水泳代表の伊藤華英氏、学研ココファン・ナーサリー桃井 清水淳子園長、そして当社の貞松社長4人による座談会が行われました。
司会者は早稲田大学政策総合科学研究所招聘研究員 石元悠生氏が務めました。
1つ目のテーマは「保育施設における午睡中の安全対策について」です。保育園では、SIDS対策として保育士による5分おきのブレスチェックや表情を確認するため部屋の明るさにも気をつけていることなどを清水園長が説明。
それを受け、貞松社長から、「そういった保育士の負担を軽減するために午睡センサーを開発しました」と説明。持丸氏からは、「午睡センサーのようなテクノロジーの普及は増えておりメリットも大きい。もっと普及させるためには仕組みが必要です。」と発言。たとえば認証マーク。このマークがあれば、安全意識が高い園なのだとみんなが認識すれば、普及率向上につながるそうです。さらに午睡センサーを使ったほうがいいのだという社会の雰囲気が醸成すれば、やがて家庭でも使う人が現れ、午睡事故低減につながるということです。
伊藤氏からは、「お昼寝時に人が見守ってくれていることは伝わります。ただ、テクノロジーも使って二重の安全策が講じられるようになれば、保護者としての安心感は増しますね。こういうセンサーがあるということは知らなかったので、もっと広まって欲しいと思う」と母親ならではの意見を述べていました。
保育園の事故対策はマニュアル作りより情報の分析で危険を見える化
2つ目のテーマは「保育園の事故対策について」です。特に水泳中の事故について議論がされました。「マニュアル的な能力は、いざという時には役に立たない。ルールを学ぶよりなぜ事故が起こったかという情報を一緒に考え、改善することが大切」という持丸氏の意見に、みなさん賛同。子どもたちの安全を守るためには、ルールづくりより一人ひとりの意識改革で危険を見える化することこそ、子どもたちの安全を守れるのではないでしょうか。対談は約45分間にわたって行われ、さまざまな意見が交わされました。
会場に参加されていた方にお話しをお聞きしたところ「子どもの危険に対して、自分たちも専門的な視点を持つことが大切なのだと感じました」と感想を述べていました。
最後に貞松社長から「今回のシンポジウムで事業者側の情報発信が大切だと感じました。いくら良いものでもアピールしなければ人の心は動きません。そういう面にもリーチできるように、今後も活動していかなければならないと思います。」と感想を述べました。