出所:総務省行政評価局「発達障害者支援に関する行政評価・監視 結果報告書」(2017 年1月) http://www.soumu.go.jp/main_content/000458776.pdf

2012 年に文部科学省が実施した全国の公立小学校に在籍する児童・生徒を対象とした調査では、発達障害の可能性のある子どもの割合は推定で 6.5%という結果でした。
小学校在籍児童で推定6.5%の子どもが発達障害の可能性があるということであるが、未就学児ではどのような状況かというと、総務省が乳幼児健診時に発達障害児の発見のためにどのような取組をおこなっているか 31 市町村を対象に調査した際に発達障害の疑いのある子どもの割合も集計しています。

上の表は2017年に総務省行政評価局が報告書に記載した「乳幼児健診により発達障害が疑われた児童の割合」を加工したものです。医師の診断の有無ではなく発達障害の恐れがあると市町村が認定した子どもの数ではあるが、1歳6か月児健診では 2010 年に 12,488 人だったのが 2014 年では 17,024 人と 4,536 人増えています。3歳児健診では、2010 年に 7,859 人であったものが 2014 年には 10,105 人と 2,246 人増えています。

発達障害とは先天的な脳と神経の障害であり、「自閉症スペクトラム(ASD)」「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」「学習障害(LD)」の三つが単独または併存した状態をいい、併存している方が、対人コミュニケーションを始めと した社会的スキルに難が出やすいものとされています。

現在も増えつづけている発達障害児への主な対応としては、認可保育所での障害児保育の実施・推進、障害福祉サービスとして「児童発達支援事業所」や「放課後等デイサービス」への通所による療育が挙げられます。そのいずれも、発達障害児と直接的に関わる役割を担うのは主な資格者は保育士となっていますが、発達障害に関する専門的な知識を有する保育士は少ないのが現状です。これは、専門知識を得る場が養成学校での少ない授業や、自治体や民間機関が行う研修に自主的に参加するくらいしかないためです。また、専門知識を測るものの一つである資格においても、発達障害の分野に関る国家資格は「特別支援学校教諭免許状」のみであり、これは教諭の普通免許を保有していなければならず、保育士資格のみの有資格者は取得することができません。

現在、世界の情勢に日本も従い、障害児(者)と健常者の共生社会や、インクルーシブ保育などが進められる方向性となっていますが、そもそも発達障害児に対して適切な療育ができる制度と体制と方法が確立されていない状況では多くの弊害がでることが予測される。そのためにも、まずは発達障害児に対して専門的知識を身に付けることができる制度や資格の整備が必要となるでしょう。