AIAIグループ株式会社は2007年に千葉県で開設した無認可保育園からスタートし、現在直営施設であるAIAI NURSERYとAIAI PLUSはあわせて100か所を超えるまでに成長いたしました。
少子高齢化の著しい進展や情報社会の発展などにより子どもを取り巻く環境は大きく変化し、保育業界もまた変革の時代を迎えています。 就学前の子どもたちをめぐる現状や、当社の保育・療育・教育に関わる事業に込めた思いをまとめました。

1.AIAI三育圏の形成

AIAI三育圏

「AIAI三育圏」とは、AIAI NURSERYが提供する「保育」、AIAI PLUSが提供する「療育」、CHaiLDが提供する「教育」の3つの事業のシナジー効果を最大化させる取り組みです。

保育、療育、教育のそれぞれの事業が互いに補完し合い、より多様な子どもとその保護者をサポートしていく仕組みづくりをしたいと考えています。

例えば現在、小中学生では全体の8.8%に当たる子どもが、発達に何らかの問題や障害を抱えるなどして学習面・行動面での特別な支援を必要としているといわれています(注1)

しかし、保育園や幼稚園には、小学校や中学校のような通級支援や特別支援学級がありません。さらに保育園児は、今のところ原則として両親が共働きです。結果として、特別な保育や支援が必要な子どもたちが、適切な制度がないために不利益を受けています。

こうした制度のはざまにいる子どもたちへのサポートを補完するのが「保育×療育」のシナジーです。グループ内の児童発達支援事業所「AIAI PLUS」と「AIAI NURSERY」とのスムーズな連携によって、こうした子どもたちとその保護者に十分なサポートを提供していきます。

また、保育園では従来、小学校入学前に基礎的な学習をサポートする就学前支援がきちんとなされてきませんでした。しかし、保育園に通った子も、幼稚園に通った子も、同じように小学校に進みます。

両親が働いていてAIAI NURSERYに通う子どもも、「保育×教育」のシナジーによって、小学校への準備をできるようにしていきます。

これらを一体的に提供し、多様な子どもたちをより強くサポートし、新しい価値を生み出していきたいと考えています。

(注1)文部科学省: 通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)

2.保育 × 療育 のシナジー

2.1 発達に課題のある子どもたちの現状

  • 文科省・通級支援児童の推移G(図1)
  • アメリカの発達障害児G(図2)

少子化の急速な進行にもかかわらず、発達や成長に課題があり、特別なサポートを必要とする子どもは増え続けています(図1)

米国では発達障害を抱える子どもが全体の2割に上るとされ(図2) 、政府統計ではADHD(注意欠如・多動症)と診断された子どもだけでも600万人(9.8%)と推計されています(注2)

こうした子どもたちが増えている背景には、「発達障害」という言葉が広く社会に知られるようになったことに加え、晩婚化や不妊治療の発展などもあるといわれており(注3)、今後も増え続ける可能性は高いと考えています。

しかし前述したように、日本には発達に課題を抱える就学前の子どもたちを十分にサポートする制度はありません。こうした子どもたちだけをみる保育士(加配保育士)を配置できる制度はありますが、保育士不足のなか、それぞれの園や子どもたちの状況に合った加配保育士の確保は極めて難しいのが実情です。

結果として、発達に課題のある子どもたちが十分なサポートを受けられないだけでなく、それ以外の子どもたちへのケアや保育士の負担という面でも影響が大きくなっているのです。

2.2 発達分析による早期のアプローチと支援

初めて保育園に入園する子どもの多くは、0~2歳です。この段階では、3歳児健診(注4)の受診前であることもあり、その子の発達に課題があるかどうかはまだわかりません。

そこでAIAI NURSERYでは、子どもたち一人ひとりの発達を記録し、データを蓄積しています。こうして蓄積したデータをもとに、AI(人工知能)によって発達の遅れを検知する「発達分析」のシステムは、特許を取得しています。この発達分析を活用し、明らかな発達の偏りや遅れがみられた場合、速やかにAIAI PLUSと連携し、特別な保育を提供することでサポートします。

具体的には、その子をサポートするために保育士を増やしたり、療育を行う専門の児童指導員が保育園に出向いて支援をしたり、といったことです。

また、保育士にも発達や障害に関するより深い知識が求められます。そこでAIAI NURSERYでは、園ごとに児童発達支援管理責任者(児発管、注5)の資格を持つ保育士を配置できるよう、児発管の資格を取得を奨励し、サポートしていきたいと考えています。

  • (注4)満3歳~満4歳の間に受診する健康診断。内容は身体測定や尿検査、視力・聴力の検査、問診や歯科健診などで、子どもの身体と心の健康状態や成長、発達を診る。母子保健法に基づき、各自治体が実施する。
  • (注5)障害のある子どもの発達に応じて個別支援計画を作成し、保護者や関係機関等と連携して子どもを支援する専門職。障害児通所施設・障害児入居施設には1名以上の専従者を置くこととされている。

2.3 AIAI式保育所等訪問支援

発達が気になる子どもが通う幼稚園や保育園などに専門の支援員が出向き、集団生活になじめるよう個別のサポートを行ったり、幼稚園や保育園職員に、その子との関わりについてアドバイス行う「保育所等訪問支援」(注6)という制度があります。

AIAI NURSERYでは、療育を行っているAIAI PLUSと連携し、こうした子どもたちにAIAI PLUSの支援員による保育所等訪問支援を行っています。

一方でAIAI PLUSの保育所等訪問支援は、AIAI NURSERYだけでなく、地域の他の保育園や幼稚園に通う子どもたちに対しても行っています。発達に課題を抱える子どもは増えていますので、保育の現場ではこうした子どもたちへのサポートが大きな課題になっています。

私たちは「発達分析」を活用して、グループ以外の園に通う子どもや保護者、保育者に対しても必要なサポートを提供していきます。

  • (注6)専門の指導員が保育所や幼稚園、学校など集団生活を営む施設を訪問し、集団生活への適応のために専門的な支援を行う。訪問先の職員が対象児の特性を理解したうえで、環境づくりや活動を行えるようにすることで、すべての子どもが安心、安全な環境で、保育や教育による成果を最大限引き出すことを目的としている。制度の利用には保護者による自治体への申請が必要。

3.保育 × 教育のシナジー

3.1 就学前教育の現状

2018年の保育所保育指針において、保育所は初めて「幼児教育を行う機関」であると明記されました。日本では従来、就学前の子どもが通う施設として文部科学省が管轄する幼稚園、厚生労働省が管轄する保育所があり、2015年に内閣府が管轄する認定こども園が加わりましたが、この3つの施設での教育内容の統一は、なかなか進まない現状があります。

一方、世界に目を向けると、保育・幼児教育の潮流は、ケア・養育を大切にして子ども自身の興味・関心を育てる「生活基盤型アプローチ」から、読み書きや計算といった就学に向けた準備に重点を置く「就学準備型アプローチ」をより重視する方向に移りつつあります。

OECD(経済協力開発機構)の調査によると、特に欧米各国では小学校入学の1年前から、実質的に義務教育と同等のカリキュラムを国が制定し、幼保小の連続性を高める試みが行われています。根底には「全ての子どもが良質な教育を受ける権利を持つ」という意識があり、幼児期から質の高い教育を受けることが、その後の学習成果、職業や家庭生活の安定にプラスとなることが分かってきています。

日本でも、幼児期から思考教育(教材やプログラムを通した子ども主体の思考など)や運動教育(体操、プール、サッカーなど)をはじめとした質の高い教育を受けさせたいという保護者のニーズは高まっています。

このように、これまでの保育所で重点がおかれてきたケア・養育に加え、これからは「教育」についての充実を図る必要があるといえます。

3.2 子どもの才能が伸びる保育園~個別最適な学びの環境

「小1の壁」といわれるように、自発的な活動としての遊びを中心とした保育園での生活と、教科書を用いた教科別の学習という小学校の生活との違いに戸惑ってしまう子どもは少なくありません。しかし本来、子どもたちの発達や学びは連続しています。

AIAI NURSERYでは、多様な子どもたちの小学校へのスムーズな接続と、乳幼児教育において最も重要な「生きる力の基礎を培う」ことができる環境の両方を整えています。

その一つが、一人ひとりに机と椅子を用意し、プロジェクターも備えた学習室です。自分専用の机と椅子があることで、子どもたちの学習意欲は高まりますし、小学校の生活に慣れやすくなる効果もあります。机に向かって集中する子どもたちを見て、家庭での姿との違いに驚く保護者もいます。

もう一つはオリジナル大型木製遊具「AINI(アイニー)」です。「跳躍力」「懸垂力」「支持力」の3つを駆使して遊べるように考案されており、遊び尽くすことで幼児期に培うべき体力・運動能力の基礎が育まれます。

都市部など十分な広さの園庭の確保が難しい園では、狭いスペースにも設置できる全天候対応型の「AINI BOX(アイニーボックス」もあります。

3.3 幼児教育プログラムの充実

思考教育~IQパズル

IQパズル

国が示している保育所保育指針には「保育が、小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながることに配慮し、幼児期にふさわしい生活を通じて、創造的な思考や主体的な生活態度などの基礎を培うようにすること」という項目があります。

ここにある「創造的な思考や主体的な生活態度」というのは、自分のしたいことがうまくできなかったとき、そのままあきらめるのではなく、どうすればできるのかを考えたり、できるようになるために自分なりに工夫をしたりする姿勢のことであると考えられます。これは、抽象的な物事をイメージする力や、仮説を立ててそれを検証していく力につながるもので、将来、結果を求められる立場に立ったときに不可欠なスキルです。

例えば、先生が算数の問題を出したとします。これに対して自分の頭の中で考えただけで、正解を出す子がいたとします。これはとても優秀な子です。

しかし日本では、先生が問題を解説し、解き方を教え、黒板に図解をしてようやく答えが分かるという子どもが少なくありません。しかも先生が説明してくれる間、自分で考えるということができていないケースが多々あるのです。

AIAI NURSERYで行う思考教育「IQパズル」は、単に正解することが目的ではなく、答えを導き出すプロセスを重視したプログラム設計になっています。

「数」「図形」「思考力」のそれぞれの感覚的分野(見えない学力)を育成し、自ら考え、答えを出すトレーニングによって、「算数本来の楽しさ」を体感してもらうことで、「考える習慣」を身に付けられます。

小学校1年生では「勉強が嫌い」という子は実はそんなにいません。学習内容が比較的簡単なので、「できる」ことが楽しいからです。

でも、学年が上がるにつれて内容が難しくなっていくと、「できない」から勉強が嫌いになってしまいます。幼児期から「考える力」をつけることで、「難しいから楽しい」「できないことに立ち向かう」ことができる子どもになってほしいと考えています。

運動教育〜Break it Kids

  • Break it Kids
  • Break it Kids

Break it Kidsは、英国で認定を受け、英国と香港で臨床経験を積んだ作業療法士が開発した運動プログラムです。 このプログラムは、新型コロナウイルスの感染拡大によって外出が制限され、子どもたちが体を動かす機会が減ってしまったことを危惧して作られた、比較的新しいものです。

筋肉を動かし、心拍数を一定まで上げる、といった計算されたプログラムによって、「子どもたちのエネルギー量が一定になる」と報告されています。つまり、エネルギーがあふれていて興奮している子は、Break it Kidsで体を動かすことによって発散できるし、逆におとなしくて活動量が少ない子は、全身を使うことで体温が上がり、活動量も上がります。こうして、子どもたちのエネルギー量がある程度均一になり、その後の学びの集中力が高まるという効果があります。

AIAI NURSERYでも、このBreak it Kidsの10分間のプログラムをオンデマンドで行ってみんなで体を動かすと、その後に取り組む学習に集中して取り組めるようになるという報告がありました。

知識教育~文字と数字の読み書き

文字と数字の読み書き

思考教育の項目で触れたとおり、生きる力の基礎を育むには「考える力」を培うことが欠かせません。一方で、小学校以上で求められる「学力」を高めるには、知識を増やしていくことが不可欠だと考えています。

そもそも思考力を育むIQパズルにも、数の数え方といった基本的な知識は必要です。

AIAI NURSERYでは、就学前準備として3歳、4歳の子どもたちを対象に、ひらがなやカタカナ、数字の読み書きを楽しく取得できる知識教育を取り入れ、ひらがな、カタカナ、数字、アルファベットの読み書きを習得できるようにします。

英語教育~KOKORO lingua

英語教育~KOKORO lingua

知識教育の一環として、スイス発の英語プログラム「KOKORO lingua」を導入しています。これはモンテッソーリ教育の考え方に基づき、ネイティブスピーカーの子どもたちが「先生」となる映像教材と、テキストで構成されており、普段から子どもたちと接している保育士が進行役となって実施します。

英国以外のEU圏では1万2,000件以上も導入されているプログラムで、英語教育としての実績が認められています。

できるだけきれいな英語に触れる機会をつくり、5歳ではアルファベットの読み書きができるようになることをゴールと考えています。

4.「AIAIに預ければ安心」な環境を目指して

従来からいわれる晩婚化の進展などに加えて、近年は新型コロナウイルスの感染拡大などもあり、日本の少子化は一気に進行しました。

政府は2023年4月にこども家庭庁を発足させ、子ども・子育て関連予算は4兆円を超える規模に増額されるなど、社会全体で子ども・子育て支援をしていこうという空気が高まっています。

一方で、障害児の増加や情報化の著しい進展など、子どもたちを取り巻く環境は変化を続けており、保育や教育に対する関心はますます高まっています。

AIAIグループでは、こうした社会の変化に対応しながら、「AIAI三育圏」の強化によって、多様な子どもたちが生まれながらに持つ才能や力を最大限に引き出せる環境を創造します。

保護者の皆さま、地域の皆さまとの連携を深め、どんなお子さまであっても「AIAIに預ければ安心」と考えていただける環境づくりをさらに進めていきたいと考えています。