出所:内閣府 子ども子育て会議(第 36 回)「幼児教育の無償化について」(2018 年7月 30 日)
(http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_36/pdf/s2-2.pdf)

上記グラフは、2017 年時点の未就学児を年齢別に分けて、保育園、こども園、幼稚園を利用している人数とその割合について表したものである。

今、国を挙げて「子ども・子育て支援新制度」への移行が進められている。この主旨を簡潔にまとめると『旧制度の幼稚園は午後2~3時で保育が終わってしまうため、未就学児を抱える若い親(特に母親)が子育てと仕事を両立させることが困難である。そのため、保育園と幼稚園の両方の機能を持つ“こども園”を整備することや、保育園のための国家予算を増やすことによって、未就学児を預かる時間を増やす』ということである。

グラフの年齢人口からもわかるように、最近の年間出生数は約 100 万人で推移している。出生数は今後も徐々に減少していくという見通しであると同時に、女性の社会進出の気運は今後ますます上昇すると予想されている。そうなれば、保育園児・こども園児(グラフの青色・緑色部分)を増やさなくてはならず、さらには未就園児(グラフの黄色部分)を減らすよう、政府や自治体だけでなく、保育事業者の努力が必要となる。

幼稚園児(グラフの赤色部分)については、幼稚園は保育園やこども園のように夕方以降まで子どもを預かる場所ではなく、“預かり保育”を実施している幼稚園もあるものの、多くの幼稚園は午後2~3時頃までとなっている。内閣府の調査によれば、「旧制度の幼稚園のうち、子ども・子育て支援新制度へ移行する予定がない、又は、将来に移行が明確でない幼稚園が半数を占める」となっている。しかしながら、女性の社会進出が一層加速するなど、今後の日本社会全体の方向性を考えれば、こども園に移行しない幼稚園は減り、保育園・こども園は増えていくことは自明である。

また、保育サービスを受けるには費用がかかることになる。国立社会保障・人口問題研究所の調査(2015 年)では、理想の子ども数を持たない理由について、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という回答が 30 歳未満では 77%、30~34 歳では 81%となっている。内閣府の調査(2014 年)では「どのようなことがあれば、あなたは(もっと)子供がほしいと思うと思うか」との質問に対し、「将来の教育費に対する補助」が 69%、「幼稚園・保育所などの費用の補助」が 59%となった。

2019 年 10 月から開始される予定の『幼児教育無償化』の対象範囲は、①3〜5歳児では、全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用、②0~2歳児では、当面、住民税非課税世帯に限定、③就学前の障害児の発達支援(いわゆる障害児通園施設)などとなっている。経済学の原理に沿って考えると、無償化政策によって負担額が減るのであれば保育サービスを受けようとする世帯数も増えるため保育サービス市場も活況となるであろう。 その場合、保育事業者において大事なことは、需要量が増えることを喜んでいるだけの姿勢ではなく、乳幼児と親に選ばれる保育内容をしっかり解析し、それらを供給する経営姿勢である。