認可保育園で実施する必要のある子どもたちの発達経過記録のためフォーマットの研究を続けています。この研究の過程で、子どもの発達の研究者に、作業の途中経過のレビューをお願いした際に、「発達連関」「機能連関」への配慮がないことを指摘されました。この指摘を踏まえ、「発達連関」「機能連関」について、調べていく中で、「言葉の発達」と「手指の発達」の連関に関する研究文献を拝見しました。また、この文献の見解を参考に、手持ちのデータを分析することで、この見解を支持する結果を得ることができましたので、少しご紹介しようと思います。
言葉と手指の機能連関の研究
参考にした研究文献は、次の文献です。
「幼児の構音不明瞭と手指運動の発達との関連について -言語聴覚士と作業療法士の視線で検証-」;「発達研究」第25巻:2011年、第26巻:2012年
この研究の問題意識は、「構音不明瞭の子どもは手指が不器用なことが多い」という言語聴覚士の経験を検証したいというものであり、結論を要約すると「正しい構音を獲得していない子どもは獲得している子どもに比べ、手指の巧緻性を必要とする小さい物をつまんですばやく他の場所に移動させる課題および巧緻性を必要としない10cm大の直方体を移動させる課題においても有意に時間を要した」というものだった。
この論文を読みながら、以前実施した保育園のヒヤリハット報告を統計的に分析した際に、「特定の1歳児の子どもが頻繁に報告に登場する」ということを思い出しました。というのも、言葉や手指の発達について「気になる」子どもは、ヒヤリハットとなるケースが多いという話しを聞いていたからです。
手指と言語・言葉の発達記録を確認してみると
確かに、ヒヤリハット報告に頻繁に登場する子どもの発達経過記録を確認してみると、言語・言葉及び手指運動の領域に未達成の項目が散見されました。つまり、言葉と手指の運動には発達面で関連があることを示唆するものと思われました。
そこで、頻繁にヒヤリとさせる子どもと同じ1歳児の10月時点の発達経過記録全体を分析しみることにしました。
1歳児の10月時点で、「言語・言葉」領域の行動項目のうち「6割が未達成の子ども」と「6割以上を達成した子ども」の2グループを比較した領域別のレーダーチャートが、次のグラフになります。このチャートをみると、言語・言葉領域で未達成の多い子どもは、手指運動領域のみならず、全体的に達成度合が低いと言う結果が得られました。
なお、2月、3月生まれのいわゆる早生まれの子どもを見ると、その約6割の子どもは「未達成」グループしたが、その4割は「達成」グループでした。また、10月以前に満2歳の誕生を迎えている子どものうちでも、約14%の子どもが「未達成」グループとなってしました。このように月齢の差も勿論ありますが、必ずしも月齢だけでは、説明できない個人差があることが確認できました。
個々の発達の間に見いだせるつながりー「機能連関」
冒頭の論文でも指摘されていますが、Penfieldが提唱した大脳皮質運動領野での機能分布では顔面と手指の運動を司る局在が近いとされており、手指運動と口を動かして行う言語・言葉の発達に関連性が認められるということでしょう。また、同論文では、「構音不明瞭の子どもは手指の基礎能力だけではなく、運動協調性の低さや感覚の需要の鈍さが影響している。」とも指摘されており、段階的に正確に発音できるようになるということが多様な発達プロセスと関連していることが示唆されていることとも整合的な結果になっています。
日々保育園で綴られ、記録化されている発達経過記録を、発達の連関という視点から分析することの有効性が、この簡単分析例からもご理解いただけるのではないでしょうか。構音の発達と手指運動の発達に関連があるということになれば、保育者の対応方法にも多様性、バラエティーが出てくるということになるでしょう。
発達経過記録の分析をとおして、このような子どもの個々の機能の発達の間にある関連を探り、鳥瞰できるような分析サービスを目指していきたいと思っています。
<<引用文献>>
池田泰子、建木健、藤田さより(2011,2012)
「幼児の構音不明瞭と手指運動の発達との関連について -言語聴覚士と作業療法士の視線で検証-」
http://coder.or.jp/hdr/26/HDRVol26.01.pdf
http://coder.or.jp/cgi-bin/coder/25/HDRVol25.15.pdf
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